体外受精のリスク【母体、赤ちゃんへの影響・早産・障害の可能性を知る】
体外受精を行う際、心配になってしまうのがそのリスクです。
自然妊娠とは違い、薬や手術を用いて妊娠を成立させようとするわけですから、体外受精で検索すると副作用などの言葉が目につき、不安になる方も多いでしょう。
母体にかかる負担、流産の可能性、早産、双子…
特に障害や自閉症など、妊娠後の赤ちゃんへの影響は、母親からすれば気になって仕方が無いと思います。
実際に体外受精を経験し、医師から説明を受けた体外受精のリスクについて、自然妊娠と比較しながらお伝えしていきます。
Contents
体外受精のリスク
まず体外受精の一般的なリスクです。
1.多胎妊娠(双子以上)
昔は受精卵を子宮に2個以上戻すことがよくあったので、双子以上の出生率が高かったそうですが、現在はどの病院でも基本的に1個の受精卵しか戻しません。
1個の受精卵が双子以上になる確率は、体外受精でも1000人に8人(出生率)くらいの割合だそうです。
この数字は自然妊娠の倍ですが、そこまで気にすることではないのかな…?と個人的には思っています。
胚盤胞移植と言って、受精卵を5日目(通常は2日)まで培養して戻す手法があるのですが、これも2個以上を戻す病院はほとんどありません。
ちなみに受精卵を2個子宮に戻した場合、妊娠率は60%に上がり、多胎妊娠率は25%になるそうです。
「双子でもいいから子供が欲しい」と願う夫婦にはリスクとは感じられない数字かもしれませんが、病院側が受け入れないケースが多いようですね。
2.流産や早産、障害の危険性
自然妊娠でもこれらのリスクはあります。
体外受精だからといって流産しやすかったりすることは、医学的に今のところ何の根拠もありません。
私が実際に体外受精を行う前、医者からもそんなリスクの説明はなかったのですが、40代の私にとって、高齢出産に関してのリスクは伝えられました。
自然妊娠、体外受精と関係なく、高齢出産は20代に比べてリスクが倍以上になってしまいます。
30代後半で不妊治療を始めたのなら、高齢出産のリスクについて知っておく必要があり、私もこればっかりはずっと頭の片隅にあって、忘れたことはありませんでした。
3.体外受精の本当のリスクは手法による副作用
体外受精をする際、刺激周期という治療法を選ぶと、卵巣に大変大きな負荷がかかります。
これが自然妊娠との決定的な違いで、簡単に言うと薬で無理やり卵子を成熟させたり排卵の時期を早めたり、遅らせたりするわけです。
〇自然周期
「自然周期」は全く薬を服用せず、卵の大きさやホルモン値が適切な値になったら採卵する手法です。
一番体に負担が少なく毎周期行うことが可能です。
〇刺激周期
「刺激周期」はまず、自然排卵を抑えるため注射や鼻薬を行います。
そして卵子が適切値になるまで毎日HMG注射(卵の数を増やしたり大きくしたりする)を打ち、頃合いを見てHCG(排卵させる注射)を打ちます。
たくさんの卵ができやすいため、妊娠成立は自然周期より高いですが、卵巣に負担がかかるので2~3ヵ月に1回が目安です。
▼体外受精までのスケジュールと、体外受精当日のスケジュール▼
自然周期ではさほど影響はないとされていますが、どちらにせよ、体外受精前後の投薬は必須となるため、どうしても副作用が出てしまう人もいるんです。
HMGという薬を用いることで卵巣が腫れてしまい、下腹部の張りや痛みが出ます。
自然妊娠だと1個だけの卵が大きくなり排卵するのですが、HMGを投与することで10個位の卵が成長する場合もあります。
そのため卵巣が8センチ程に腫れてしまうケースがあるのです。
自覚症状としては、痛みやお腹がパンパンになる、のどが渇く、体重増加がありますが、痛い時点で即病院です。
処置が早ければその後の妊娠、次回の体外受精に影響がでることはほぼ無いそうです。
上でもあげている通り、卵巣が通常よりも大きくなってしまうことで起きる症状です。
茎の部分がねじれたままにしておくと、卵巣が壊死してしまうという、とんでもない病気です。
滅多に起こることは無いそうですが、これも痛みの症状がひどければすぐに診てもらいましょう。
4.体外受精の手術によるリスク
針を卵胞までさして採卵するので、手術でのリスクは当然あります。
止血では止まらない場合は開腹手術が必要になるそうですが、私が体外受精を行った病院は1万件手術しても未だ開腹手術までした症例は1件も無いという事でした。
もし採卵手術後、腹痛が起きるようなら念のため、医師に確認してもらった方がいいでしょう。
これも極まれですが、採卵後に感染症を引き起こすケースです。抗生剤の投与、もしくは入院措置がとられます。
こちらも予想であって、報告例は今のところ無いそうです。
採卵後の卵や胚を育てる培養液の成分に、血液から作られるアルブミンというものを入れるのですが、それが血液感染を起こすという説です。
5.男性不妊治療のリスク
男性不妊症で、Y染色体上の遺伝子に原因がある旦那さんの精子から誕生した男の子には、遺伝で、将来的に精子が少なくなると考えられているそうです。
しかしこれも予想の範囲で、問題視はされていないようです。
変に心配してストレスを抱えてしまうと、ホルモンに影響し妊娠率が下がってしまうので、そっちの方がよっぽどリスクなんじゃないの?というのが私の意見です。
自閉症や障害の可能性は?
皆さんが特に心配する(私もでしたが)胎児への影響ですが、スウェーデンの追跡調査の残念な結果報告があります。
2009年12月31日までに自閉症や知的障害と診断を受けた子供のうち、わずかに体外受精で出産した子供の方が多かったという報告です。
また男性不妊が原因で精巣内精子採取術で顕微授精を行なった場合、通常の体外受精での新鮮胚移移植よりも少し確率が上がります。
と言っても、10万人に対して発症は90人ほどですから、残念な報告ですが、これは心配しても仕方ないといったところではないでしょうか。
自然妊娠との差は本当にわずかなので、体外受精だからといって、胎児への影響がものすごく高いか、というとそんなことは無いということです。
体外受精後の妊娠への影響
体外受精を行った後の自然妊娠では、妊娠しにくくなる説があるそうですが、医学的に全く信憑性がないそうです。
不安で色々心配する方が多いのでこういう噂も出てくるということなのでしょう。
体外受精を続けても妊娠しない場合、タイミング療法や人工授精に戻すこともあり、戻した途端、妊娠したという事例もあるそうです。
体外受精の周期待ちの時に妊娠したりすることもあるので、体外受精後の妊娠には全く影響はないという事ですね。
リスクの予防策ってあるの?
体外受精のリスクを回避できるのならしたいところですか、今のところ有力な予防策というのは存在しません。
症状が出た場合に早めの対処をする、ということしか病院でも言われませんでした。
リスクといっても高い確率で起こることではないため、体外受精を必要以上に不安に思う事もないのかな・・と。
体外受精は私たちが考えるよりとてもデリケートな治療法なんです。
精神面はもちろん、体を冷やさないようにしたり、免疫力をあげたりすることがとても大切です。風邪なんてもってのほかですね。
リスクはもちろんありますが、リスクよりまずは体外受精を成功させる確率をあげることに意識を持っていきましょう。
リスクを承知で行う体外受精のメリット
体外受精を行うメリットは妊娠率が上がること以外ありません。
人工授精で5~10%の妊娠率を体外受精では25~30%にあげることができます。タイミング療法の8倍の妊娠率という報告で、いかにすごいことかがわかりますよね。
受精までの工程をショートカットできるので、通常妊娠やタイミング療法よりも格段に成果があるんですね。
特に生殖機能に障害がある方や、高齢出産、そして私のように子宮内膜症や腺筋症を患っている場合は、タイミング療法ではどんなに待っても授からない訳です。
体外受精を選択する理由は、ただ一つ、妊娠する可能性が高まるから、これなんです。
副作用や手術のリスクは少ないにしても、100%無いとは断言できません。
しかしそれでも、体外受精という高度な治療は不妊に悩むすべての人の希望なんです。
まだまだ歴史が浅い体外受精
体外受精で初めて子供が誕生してからまだ40年もたっていません。顕微鏡受精に至っては確率してから15年くらいです。
医師や病院も日々進歩を目指しているので、着実に年々出産率があがっています。
それに伴い、リスクの改善や予防策も報告例を元にどんどん進化していくでしょう。
私がおばあちゃんになる頃には、子供を希望する夫婦全員が幸せを掴める世界になるといいなあと願うばかりです。
まとめ
心配ごとをあげたらきりがない、リスクとはそういうものです。
また現在の体外受精におけるリスクは本当に微々たる確率です。
私も当初は心配で色々調べてみましたが、結果「なんだ、そんなもんか」という感じで、逆に体外受精のありがたさを痛感しました。
悪いことに目が行きがちですが、やっぱり不妊治療の目的は出産です。
出産率が上がる体外受精は、リスクを考えてもおつりがくるほど、私にはありがたい治療法なんですね。